こんにちは。イラストレーター・デザイナーのkisa(@kisa.ne.jp)です。
サブスクリプションサービスやネット通販は今やなくてはならないものになっていますが、たまにやられた!ということがあります。
ユーザーが意図しない行動を取らされてしまうインターフェイスは「ダークパターン」と呼ばれ、問題になっています。
今回は、ダークパターンの一覧と、使用する側のリスクについてお伝えしていきます。
Contents
ダークパターンとは
2010年、ユーザーエクスペリエンスの専門家、且つ認知科学の博士であるハリー・ブリグナル氏は、Webサイトの中でユーザーをあざむくユーザーインタフェースに「ダークパターン」と名づけました。
ダークパターンとは、ユーザーを騙して何かを購入させたり、登録させたりするなど、意図しないことを実行させる、Webサイトやアプリで使われているトリックのこと
deceptive design
ダークパターンの種類
こっそり|Sneaking
ユーザーにとって重要な情報を隠したり偽装したりすることで、気がつくのが遅れたり、最悪気がつかないケースもあります。
たとえば、通販の最終画面で決済する際に、こっそりカゴの中にオプションが追加されていたり、特別販売手数料という謎の手数料が加算されていたり…
最初は隠しておいて、ユーザーが気がついたとしても「もうここまで頑張って入力したし、面倒だからいいや」と思う人も一定数いて、すべての価格を前もって伝えるより多くの利益が上がるというデータがあります。
また、おとり商法の例で、集客のためにすでに契約済みの物件を掲載して実際には売却してしまって違う物件を薦めたり、アップデート画面でブラウザの閉じるボタンを押すと閉じるではなくアップグレードしてしまうという防ぎようのないケースもあります。
緊急性|Urgency
「セール終了まであと何時間・何分・何秒・ミリ秒!」
このミリ秒のところがせわしなく動いているのを見ると、急がなきゃという気にさせられることでお馴染みの、カウントダウンタイマー。
締め切りが近づくと人は動くあるあるで、尻に火をつけられることで、ポチるのを後押ししてくれていますね。
売上UPのために偽のカウントダウンタイマーを設置して、タイムリミットになると再び最初からカウントダウンが始まるという設定をしているサイトもあります。
誘導|Misdirection
とあるドメイン取得サイトでは、ユーザーがドメイン契約の更新画面から離れようとする度に、ポップアップが表示されます。
「更新画面に戻る」のボタンが強調されているため、それに誘導され再び元のページに戻され、ボーッとしていると無限ループに陥る可能性があります。
ボタンの配置も、他の場面では進むボタンが右、戻るボタンが左にあったはずが、ボップアップ画面のみ逆になっていて、慣れ親しんだ配置を逆手に取っています。
私もほぼ毎度、間違って更新画面に戻っています…
他にもコンファームシェイミイングと呼ばれる、海外サイトでよく見られる表記の仕方があります。
「今すぐゲットする」
「いいえ、健康管理には興味ありません」
ユーザーが掲示されたものを断ろうとすると、上記のようなコピーで羞恥心や罪悪感を植え付けて契約させようという狙いです。
このようなコピーを見ても、思惑とは別の感情が湧きますが、皆さんはいかがでしょうか。
社会的証明|Social proof
自分よりも周りの人の意見が正しいと思い込む心理を利用して、偽のアクティビティメッセージやサクラレビューを表示しているケースがあります。
架空の人物に商品の良さを語らせる「お客さまの声」は、広告以上の信頼を得られる効果といっても過言ではないほど強力です。
サクラチェッカーのようなものを使えば見破ることもできます。
希少性|Scarcity
「大人気!在庫残り1点!」
このようなコピーには、やっぱり目がいってしまいます。
手に入りにくい商品やサービスに価値を感じてしまう心理から、人気なものや他の人が欲しがっているものを通常よりさらに高く評価しています。
時間的な切迫感より、在庫数が限られている方がいつ在庫切れになるかわからないため、より高い切迫感が生まれます。
妨害|Obstruction
サービスを解約するユーザーを無理に引き留め、手続きに苦戦するというケースも割と多いです。
入会するときは申し込みボタンもデカデカとあり簡単なのに、退会するときは解約のボタン探しがめっちゃ大変という手法です。
電話や郵送でしか受け付けてくれないパターンもあり、私も電話でしか受け付けてくれないサービスを利用したことがありますが、一気に解約の手間のハードルが上がり、断固として解約しようにも電話だと「こういうプランならどうですか?」と提案され断りづらい雰囲気になります。
強制|Forced Action
「ただこの記事を読みたいだけなのに」
「ただ相見積もりで見積もり価格だけ知りたいのに」
などと思っても、名前や電話番号、住所、はたまた家族構成や年収などの個人情報と引き換えに提供される、避けては通れない「強制登録」
営業電話が来るんだろうなとか、もっとヒドイと情報も売られたりする世の中だから怖いですね。
もう一点、無料トライアルの解約忘れを狙い、事前の予告や通知することなく課金請求を行う「強制継続」
クレジットカードの明細などを見なければ有料プランに切り替えられたことに気づかないため、余分な支出が発生してしまう可能性があります。
ダークパターンのリスク
目先の利益を追い求めた結果、起こり得るリスクがこちらです。
- 顧客がサービスを使用してくれなくなる
- カスタマーサポートの負担が増える
- 返金率の増加
- SNSや口コミ投稿サイトなどで悪評が拡散される
- 離職率の増加
- 裁判沙汰にまで発展する可能性がある
長期目線で考えることはなかなか大変なことではありますが、上記のようなことが起これば再起不能の結末を迎えかねません。
「誰かにシェアしたくなるサービス」を考えると、自ずと顧客が増えてコストが下がり、サービス料を抑えられたり、宣伝費に使えたりしてさらに顧客が増えるという好循環を生み出すことができます。
ダークパターン参考資料
2021年3月に日経新聞が「国内の主要ウェブサイトの6割でダークパターンが確認された」と報じました。
想像以上にはびこっている…
その状態を打破するために、ダークパターンを取り扱った専門サイトが、ダークパターン認知度の向上と、企業による悪用を防ぐことを目的に情報を公開しています。
わかりやすく網羅的にダークパターンについてまとめられています。
巻末には顧客満足度についても書かれているので、そちらも参考になります。
デザイナーや経営者、ユーザー側の目線としてもおすすめの本です。
さいごに
セールスのテクニックとダークパターンの境界線がグレーな部分もありますが、商品購入時やなにか料金が発生するタイミングでは、消費者が純粋に「ほしい」と思ったものだけを買えるようにすることが本来あるべき形です。
やはり業界は違えど、すごい方が口を揃えて言う「顧客第一主義」の考え方で、わかりやすいデザイン、インターフェースを心がけることが大事だということですね。