• 【怖美しい大人の絵本】エドワード・ゴーリー展と重厚感漂う松濤美術館が相性バツグンすぎる

2023.4.27 2024.2.9 アート

【怖美しい大人の絵本】エドワード・ゴーリー展と重厚感漂う松濤美術館が相性バツグンすぎる

本ページはプロモーションが含まれています

 
こんにちは。イラストレーターのkisa(@kisa.ne.jp)です。
初めてエドワード・ゴーリーの絵本と出会ったときは、「絵本とは良い子に見せたい心あたたまるほっこりした絵と物語」という概念とは間反対だったので、かなり衝撃を受けました。
暴力的な場面や不気味な場面が淡々と描かれていたりしますが、その怖いけど美しい独特な世界観に気づいたら引き込まれてしまいます。
そして生きてたら不条理や理不尽なことってあるよね…ということを教えてくれます。
今回は、渋谷で開催されている「エドワード・ゴーリーを巡る旅」展を観に行ってきたのでまとめました。

エドワード・ゴーリーを巡る旅

 
独特なモノトーンの世界観と、背景まで緻密な線描で人気を博す、絵本作家エドワード・ゴーリー。
ゴーリー自身がイラストとテキストの両方を手がけた絵本以外にも、挿絵や舞台、衣装のデザイン、演劇やバレエのポスターなど手掛けていました。

2000年の秋頃には、柴田元幸氏の邦訳による日本初の絵本刊行以来、続々と刊行されています。

そんなゴーリーの終の棲家に作られた記念館・ゴーリーハウスで開催されてきた企画展や、「子供」「不思議な生き物」「舞台芸術」などのテーマを軸に、約250点の作品で再構成された展覧会です。

 

第Ⅰ章 ゴーリーと子供


まず、地下に降りると『不幸な子供』の一作品がデカデカと展示されていました。
こんなに拡大してみても、ペンだけで描いたその緻密さに引き込まれます。

1925年にシカゴで生まれたゴーリーですが、子ども時代や青年時代のドローイングが展示されていました。
会場内のものは撮影NGのため掲載できませんが、幼少期からひよこ1匹描くのにも模様の入ったオリジナリティのあるイラストで、1930年代後半には22枚の『魔の手』という後の絵本にも通ずるようなイラストでした。

20世紀前半のアメリカで子ども時代を過ごしたあとは、兵役を経てハーバード大学でフランス文学を専攻しました。

  

 
ゴーリーの絵本の中の子どもたちは、不条理で悲劇的なことが起こり、ハッピーエンドを迎えないという特徴があります。
このような現代のおとぎ話の起源は、子どもたちがひどい目にあう19世紀イギリスのヴィクトリア朝の「教訓譚」の形式を皮肉ったものとも考えられています。

何不自由ない生活を送りながらも、子ども時代のゴーリーはそんな風に育てられたのか?世界がそんな風に見えていたのか?と疑問が残ります。

 

第Ⅱ章 ゴーリーが描く不思議な生き物


ゴーリーの絵本の中でも1位2位を争うほど人気な『うろんな客』
とある家に突然入り込んできたまま、17年以上も居座り続ける黒いペンギン?のような生き物です。

ゴーリーが描く生き物は不思議だったり不気味でもあるけど、どことなく人間味や愛らしさがあるという、唯一無二なキャラクターを創造しています。

 

第Ⅲ章 ゴーリーと舞台美術

 
2階に上がると、『ドラキュラ・トイシアター』の 表紙・原画作品が展示されていました。

 


ゴーリーが12~13歳の頃、バレエの舞台美術や衣装に興味津々でした。
20代終盤にニューヨークに移住すると、ニューヨーク・シティ・バレエの公演に通いつめ、そこで振付師を担当していた口シア出身のジョージ・バランシンを敬っていました。
その影響から、バレエを主題にした絵本『薄紫のレオタード』が刊行されました。

 

第Ⅳ章 ゴーリーの本作り

 
ゴーリーはラフスケッチした後、お気に入りのメーカー「ヒギンズ」のインクに、カリグラフィー・ペンの「ハント」の204番のような細いペン先を用いて作品を仕上げ、出版時のサイズで制作していました。
タイトルや謝辞だけではなく、テキストの文字まで丁寧に手書きで表現されています。

絵を描く際には余白を大切にしていて、余白によって物語が生まれるということで勉強になりました。

また、本作りの基礎にあるのは、19世紀から20世紀初めにかけて読んだイギリスの本です。
たとえば青年時代、リメリック詩(五行戯詩)に滑稽な挿絵をつけた作品で有名なイギリスの詩人・画家のエドワード・リアから、そのドローイングの様式を真似るほど強い影響を受けました。
 

第Ⅴ章 ケープコッドのコミュニティと象

ミュージカル劇『ドラキュラ』でトニー賞を受賞した翌年、その賞金でケープコッドのヤーマス・ポートに家を購入しました。
後年は、ニューヨークからマサチューセッツ州のケープコッドにある「エレファント・ハウス」に引っ越し、75歳のときに心臓発作で亡くなる2000年まで活動を続けました。
ゴーリーは生まれ変わったら「石」になりたいという言葉を残していて、石を収集していたようです。

現在は「エレファント・ハウス」から「エドワード・ゴーリー ハウス」と名前を変え、記念館として2002年に開館され、原画や資料の展覧会が定期的に開催されています。
 

重厚感漂う渋谷区立松濤美術館がゴーリー作品とマッチ

 
松濤美術館は、1981年10月に開館されました。
漢字が難しいですが「しょうとう」と読みます。(松なんとか美術館とはもう言いません)
設計は哲学的な建築家といわれる白井晟一氏が担当しました。

実は前々から美術館自体も気になっていましたが、薄暗く重厚感のある雰囲気が、ゴーリー作品と相性バツグンでした。

 

 
廊下に出て窓の外を見てみると、池の中に噴水がありました。
同じく池に噴水があるという静岡市立芹沢銈介美術館(石水館)と共に、白井氏の晩年の代表的な作品ともいわれています。

 

 
鑑賞を終え、気になっていた扉を開けて渡り廊下に出て見上げると、気持ちの良い青空が…!
閑静な住宅街の立地に考慮し、外周の窓を最小限に抑えて、中央の吹き抜け部から採光する形状となっています。

 

 
館内ではいろいろな形をした、金フレームの額縁のような鏡を見かけました。
作品や観ている人たちがチラっと映り込んでいたので、「作品を鑑賞する人々」という動くアート作品のようでした。

 

 

エドワード・ゴーリーを巡る旅

 ■期 間 2023年4月8日(土)〜6月11日(日)
      10:00~18:00(金曜〜20:00) ※月曜日休館

 ■会 場 東京都渋谷区松濤2-14-14 渋谷区立松濤美術館

 ■入館料 一般1,000円(800円)、大学生800円(640円)、
      高校生・60歳以上500円(400円)、小中学生100円(80円) 
  ※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料 
  ※土・日曜日、祝休日は小中学生無料 
  ※毎週金曜日は渋谷区民無料  
  ※障がい者及び付添の方1名は無料
  ※現金払いのみ
 https://shoto-museum.jp

 

さいごに

エドワード・ゴーリーに関しては絵本を読んだことがあり、生涯独身で猫を飼っていたという情報しか知りませんでしたが、今回ゴーリーの子ども時代から晩年までの軌跡や、絵本以外にも色々な原画作品に触れ、深く知ることができました。
全国巡回予定とのことなので、気になった方はぜひ観に行ってみてください。

share

New Article