• 惹きつけられる和紙のイラスト【高級和紙舗日本橋はいばら】

2024.2.28 2024.2.28 イラスト

惹きつけられる和紙のイラスト【高級和紙舗日本橋はいばら】

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こんにちは。イラストレーターのkisa(@kisa.ne.jp)です。
日本橋にある老舗の和紙舗「榛原-はいばら-」の伝統とアートの展示が、三鷹ギャラリーにて開催されていたので、終了間際に鑑賞してきました。
今回は、島国日本ならではの和の良さをひしひしと感じられる、和紙とはいばらについてお伝えします。

榛原-はいばら-とは

「日本橋 榛原」は、1806年(文化3)創業の和紙専門店で、初代 中村佐助が開業しました。
江戸時代から現代まで、200年以上も続いている老舗です。
ジンチョウゲ科の植物である雁皮から作られる、雁皮(ガンピ)紙はなめらかで光沢に富み、書き味が良いと江戸の人々の間で評判になりました。

ウィーンやパリで開催された万国博覧会では、出品した商品が賞状を授与され、はいばらの和紙製品がV&A美術館、グラスゴー美術館、パリ装飾美術館などに保管されています。

創業から柴田是真氏・河鍋暁斎氏・竹久夢二氏など、多くの画家に図案の創作を依頼し、現代でもイラストレーターのますこえりさんや、香老舗「松栄堂」など、さまざまなコラボ作品を生み出されています。

 

HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美


「HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美」
https://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20231216/

このポスターの華やかさに惹かれ、ギャラリーに吸い寄せられました。
写真撮影は一切NGでしたが、会場には当時のはいばらの資料や、千代紙や絵封筒、団扇やぽち袋、熨斗など数多く展示されてボリュームがありました。
木版摺りの展示作品はどれも色鮮やかで、版ズレの感じもめちゃ良かったです。
震災などの影響で展示できなかったものもあったようですが、個人の方がコレクションとして所有している扇子など貴重なものも並んでいました。

柴田是真が発明したといわれる代表作、紙の上に漆で描かれた「漆絵」が国宝感を放っていてすごかったです。
紫檀の板の上に描かれたものを木製額に入れたように見えるのに、実際には紙の上という、トリックアートのような作品です。
明治11〜12年には欧州でジャポニズムへの関心が高まり、和×洋の大正ロマン風デザインもグッときました。

また、当時の紙媒体事情の歴史も勉強になりました。
祝儀袋の右上についている熨斗は、元々は「熨斗鮑」と呼ばれていたようで、長く伸ばした鮑の乾物は長命の妙薬として重宝され、お祝いや高貴な人への贈り物に用いられていました。
時代が移ろい、鮑の代わりに美しい絵柄の和紙が用いられるようになり、当時の人々の生活では熨斗は重要度が高く、贈答や季節によって選んでいたようです。
祝儀袋を買ったらもれなく熨斗は付いていて、個別に選ぶことなんて考えることもなかったですが、形の由来を知れたり、いろいろな絵柄があって面白かったです。

江戸時代のカレンダーにあたる大小歴は、毎年大小の月(大=30日、小=29日)の配置が変わるため、その年ごとの暦を携帯して確認するという習慣があったようです。
今のカレンダーとは全然違う、はじめて見るものでしたが、一枚絵の上に暦が載ったシンプルなものでした。
ただ、幕府によって暦の販売は禁止されていたため、年末年始の贈答品として配布されていました。
父が会社でお客さんからもらって帰ってきたり、私も会社員時代や外注先などから送られてきていたので、カレンダー過多の原点がわかりました。

また、ぽち袋のコーナーも印象に残りました。
相手に労いや感謝の気持ちを伝えるために渡す金銭を贈るときに用いる小型の紙袋「ぽち袋」
昔のぽち袋は今のものと比べていやに長細いなと思ってググってみると、藩札という長細いお札が使用されていたんですね。
贈り主のユーモアやセンスが反映され、金額よりも印象付けることがあり、長く手元に保管されたようです。
絵柄も福笑いや閻魔大王、ガイコツなど、他と違って攻めたイメージでした。
お年玉やちょっとしたお礼を入れるときに、選ぶときも貰うときも楽しめるものはいいですね。
 

はいばらオリジナル商品

はいばらの千代紙は大奥をはじめ、諸大名に仕える女中たちの衣装箱や道具入れに使用され、次第に町人の間でも広がりました。
花や鶴、松、宝物品などのモチーフが描かれた、色鮮やかな千代紙は江戸土産としても人気で、万国博覧会などを通して世界に紹介され、日本の伝統工芸品として海外に輸出されるようになりました。
 

 
職人さんの手で一枚一枚丁寧に作り上げられている様子が、公式YouTubeにアップされていました。
捺染摺(なっせんずり)という技法だそうです。
職人技とエプロン染み込んだインクがかっこいいです。

 

六角筆筒


千代紙を使用した筆筒を購入。
はいばらのストーリーや職人さんの技を知った上で手に取ると感慨深いものがありますね。

 


パコっと立ち上げて六角形の厚底板を押し込めばでき上がり。
美術館のグッズコーナーでも感動しましたが、しっかりとした和紙の質感が感じられて、ちょび紐にも味があり、お部屋に置けば和モダンなオーラを放ってくれます。

その他にも、レターセットやぽち袋、華たんすや扇子など、和小物がたくさんありました。
公式オンラインショップでも販売されていました。

 

HAIBARA Art & Design図録本


今回の展覧会の内容が盛り込まれた、はいばらの図録も購入しました。
会期中、前期と後期で一部展示替があったそうです。
シルバーの箔押し、見返しの遊び紙、ページの側面(天や小口)の赤色など、こだわりが詰まったステキな装丁で、さすが紙を取り扱った和紙屋さん。

 

 
「貝合わせ」という貝に一枚一枚描かれた千代紙のデザインが個人的にビビッときました。
作家によってまた特徴があり

 


展示を見て、当時の人々は紙選びを楽しんでいたのが伺えました。
ペーパーレスや電子マネー電子書籍など、デジタル化は便利でエコかもしれませんが、手書きの良さや質感、匂いが感じられる紙媒体はやっぱり心揺らぐ良いものだと感じました。

今はLINEやSNSなど画面上のやり取りが主ですが、そういえば私が子どもの頃は文通や交換日記、年賀状もたくさん描いて、紙ならではのワクワク感があったな、とエモい気持ちになります。
コピー用紙などではなく、手間暇かけた紙は、より希少性の高いものとして価値が上がるかもしれません。

 

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