こんにちは。イラストレーター・デザイナーのkisa(@kisa.ne.jp)です。
日本の高齢化によって75歳以上の後期高齢者が急増し「重老齢社会」に突入しています。
今回は、シニア目線のデザインと効果的なコピーについてお伝えしていきます。
Contents
シニア目線でのデザインのポイント
文字の大きさと行間
見出しと本文の文字の大きさの比率をジャンプ率といいます。
ジャンプ率を高くするとインパクトを出すことができます。
見出しは本文の約2.5〜3倍のサイズが目安になります。
また、文字の大きさは大きければ良いという訳ではなく、本文のサイズは一般的には8〜10ポイント、シニア世代には12〜14ポイントが基準になります。
チラシなど面積が限られていると、文字量や写真の量によっては大きくできない場合があります。
限られたスペースの中では、文字を大きくするよりも、字間と特に行間を取ることを優先させた方が読みやすくなります。
シニア世代にとって読み進めやすい行間は、「文字の高さの70%」です。
一般的には「文字の高さの50%」が基準なので、最低でもそこは確保したいところです。
色の見え方が違うので注意
カメラのレンズに当たる部分が目の水晶体にあたりますが、加齢につれ白濁していき、さらに進むと黄変化します。
黄変化した水晶体を通すと、上図の右のように、黄色(褐色)がかった色に見えてしまいます。
加齢により暗いところでモノや色が見えづらくなり、60歳だと20歳の2倍の明るさが必要だと言われています。
ただ、明るくしすぎても水晶体の濁りに光が乱反射して眩しさを感じてしまいます。
また、青系の色は、特に暗く見え、デザインによっては文字や形の認識も難しくなってしまいます。
同系色では明度差を高くして読みやすくしましょう。
- 白抜き文字にしたい場合は、背景色の濃さが70%以上を目安
- 淡い色を背景にしたい場合は、グレースケール15%を目安
(できるだけ色つき背景は黒文字)
写真の上はできるだけ避け、縦組みに
新聞、小説、俳句など、シニア世代は縦書きに接してきた時間が長く、慣れ親しんでいます。
2016年に、トッパン・フォームズという会社が脳機能計測実験をしました。
それによると、「45歳以上には縦書きの方が関心を持つ」傾向があるという結果が出ました。
読みやすさと、脳の活発化により内容を理解しようとして関心が引き出されるようです。
ただ、数式、記号が多い論文などでは横書きの方が良いとのことです。
また、写真の上に文字を乗せることはシニアを混乱させてしまいかねません。
- 写真はグラデーションがかっていて、一文字一文字コントラストの違いで読みづらかったり、目が疲れてしまったり、チラついたりしてしまう場合があります。
- 写真も一つの情報で、その上にさらに文字という情報を乗せている状態です。
加齢により脳の情報処理速度が落ちるため、理解しづらくなってしまいます。
どうしても乗せたいときは、海や空、砂丘など、淡くスッキリした写真ならさほどストレスを感じません。
または写真の中にバランスよく白枠などを敷いて、その上に乗せると読みやすいです。
シニアに刺さる販促コピー
シニアにシニアと言ってはいけない
シニアシニアと言っていますが、一体シニアとは何歳からでしょう?
還暦から?
実は50代なら60代〜、60代なら70代〜、70代なら80代〜という傾向があります。
そのため、「シニア世代のあなたへ」というコピーは、私には関係ないと思われ響かないのです。
シニアの不満・不安に寄り添う
長生きするからこそ出てくる不満、不安があります。
例えば、薄毛に悩む方に「あの頃のフサフサだった髪を取り戻せる!」や、
肌が乾燥して辛い方に「肌のうるおいは足りてますか?濃密クリームがあなたを包んでうるおいを閉じ込める!」など、不満や不安を解消するコピーが効きます。
カタカナ語・略語に注意
高年齢になればなるほど、カタカナ言葉の意味がわからず困ると思っている方が多くなっています。
「運動選手かアスリート、どちらを使うか」という問いに、20代ではアスリートが約73%、70代では逆に運動選手が約70%と答えました。
「リサイクル」や「ボランティア」など全体的に定着されているものは別として、「タイアップ→提携」「WTO→世界貿易機関」「タピる→タピオカドリンクを飲む」と言ったように置き換えて伝えましょう。
こちらの本にシニア目線のデザイン、コピーについてまとめられています。
これからますます拡がる市場なので、読んで損はないと思います。
さいごに
目が見えづらくなったり、情報処理のスピードが遅くなったり、体力が衰えたり…
シニアに情報を届けるには、まずシニアの身体のことも含めて理解し、デザインやコピーを考えることが重要です。
デザインはかっこよさやオシャレが優先ではなく、「伝えたいことを確実に届ける」ことが大前提です。
全世代に届けたいときは、まずシニア世代に寄り添う心が大事だということですね。