こんにちは。イラストレーター・デザイナーのkisa(@kisa.ne.jp)です。
本を選ぶ基準は、まず文言だと思いますが、それに勝るとも劣らないのがパケ買いしちゃうほどの見た目をしたこだわりの装丁。
そんなブックデザインの最高峰「世界で最も美しい本コンクール」という催しが毎年開催されているというではありませんか。
ということで今回は、おしゃれで美しい装丁の本が一挙に集結したユニークな展示会「世界のブックデザイン2021-22」+α印刷博物館を見に行って来たのでまとめました。
Contents
世界のブックデザイン2021-22
「世界で最も美しい本コンクール」は、1963年から開催されているブックデザインの国際コンクールで、
毎年各国の書籍製作に携わる専門家たちにより、約30か国600冊ほどの書籍について、 デザイン・コンセプト・機能性・タイポグラフィー・素材の選択・印刷・製本などの観点から審査が行われています。
今回の展示はそれ以外にも、日本・ドイツ・オランダ・オーストリア・フランス・カナダ・中国の、各国で開催されたコンクールの入選図書も併せて展示されています。
展示されている本はすべてお触りOKで、ギャラリー入口で配布されている使い捨て手袋を装着して、すべてお触りさせてもらいました。
世界のブックデザイン約160冊の中から一部を紹介
発行部数が少ないなど入手困難な本があるため、受賞作品すべての展示ではありませんが、約160冊と見応えバツグン。
写真オールNGのため、配布チラシの切り抜きや、商品リンクから引っ張ってきた画像で一部を紹介。
世界で最も美しい本コンクール
On the Necessity of Gardening
こちらが2022年度、映えある第1位の「金の活字賞」
ガーデニングの必要性についての内容で、表紙も絶妙なバランスでオシャレですが、それ以上に中身にこだわりを感じました。
美しい組版に繊細なイラストやカラー写真、ガーデニング愛が詰まっています。
Met Stoelen
続いて「金賞」
オランダがワンツーと受賞し、強しです。
本の形を利用して椅子を表現していて、半分開いた本の形(L字型)を椅子の背と座に見立てることができるというナイスアイデアで、立体的に感じられます。
制作者のK.Chenさんは学生で、才能とはこのことですね。
Valentine Schlegel: Je dors, je travaille
「銀賞」を受賞したのは、フランス人彫刻家の作品集です。
裏表紙もナイフで刻んだようなデザインで、黒い部分がテカテカと光り、シンプルでかっこいい装丁です。
『100年ドラえもん』
「銅賞」は母国のアニメ、ドラえもん全巻がランクインしています。
表面は布クロス装に箔押しというゴージャス仕様です。
そして全巻箱に入ってそれがタイムふろしきにくるんであるのですが、会場でもこのふろしきを開けるワクワク感といったら…!
画像をクリックすると、ふろしきも確認できます。
世界各国のブックデザインコンクール
Cabinet de l’amateur, series of 18 editions
シュールでおしゃれな雑誌「Cabinet de l’amateur」
大判の16ページに、民衆芸術、装飾芸術、科学品、美術品、奇妙なものなど、美術品や珍品のキャビネットに着想を得たさまざまな種類のコレクションが掲載されています。
また、間にある小さなブックレットには、短いテキストで写真の紹介コメントを添えています。
トイレットペーパーマガジンが好きな人にモロ刺さります。
风筝史话
凧の歴史を書いた本で、背表紙の糸かがり綴じも渋くてマッチしています。
中国は原色を使っているイメージがありましたが、意外にほとんどの本がネイチャーカラーの色味でした。
また、かなり薄い色紙に波の切れ目が無数に入っていたり、扱いに気を付けてくださいと注意書きが貼ってあるほど繊細な作りが多かったです。
Der Schneeleopard
絵本も数点選ばれていました。
こちらはオーストリアの絵本で、ユキヒョウとの冒険ものです。
黒い木の力強い筆のタッチとあたたかみとおしゃれみがあるイラストに引き込まれます。
てんじつきさわるえほん さわってたのしいレリーフブック さかな
こちらはブルーの色味が印象的な、点字付きの絵本です。
魚の形も繊細に浮き上がっているので、触ると輪郭や形状がわかって楽しい絵本です。
TAPESTRY
ジャパニーズロックバンド、LOSTAGEの五味岳久氏が作詞した、すべての楽曲の歌詞をまとめた本です。
紙の質感やエンボス加工、小口のTAPESTRYのデザインがかっこいいです。
小口アレンジ系はやっぱりそそられますね。
遠慮深いうたた寝
見た瞬間、あまりにも陶器にしか見えない装丁に、脳が軽くパニックを起こしました。
ツヤツヤの用紙に、九谷焼による陶板画が印刷されています。
送別の餃子
まるで餃子の皮のような手触りの帯の正体は「ベルベットPP加工」というもので、他のフィルムにはないしっとり感が特徴的です。
背表紙も餃子が連なったデザインでカワイイです。
広告 Vol.415 特集:流通
通販から本が届いたーとピリピリとミシン目に沿って開ければ、最速で本が読めるというドッキリ仕様です。
遊び紙のところも段ボールっぽい紙で、まさに遊び心があります。
他にも、「進撃の巨人」の巨人用マンガ(実際の巨人にとっては小さいらしい…)が、通常の新書サイズコミックスの6~7倍の大きさで迫力満点だったり、白くデザイン性の高い聖書が神聖だったり、箱形の本を合わせると七宝柄になったり、デザインの面白さにどっぷり浸れる空間でした。
印刷博物館も
印刷博物館では、その名の通り印刷をテーマとした展示が行われています。
日本と世界の印刷の歴史を辿ったり、製造方法を学んだり、VRシアター(現在公開中のプログラム:伊能忠敬の日本図)を鑑賞したりといった、いろいろな角度で印刷について知ることができます。
ただ、私が行ったときは展示替えのため、4分の1のみの展示に縮小されていましたが、代わりに無料開放されていました。
印刷の歴史は紀元前の中国から始まり、石刻文や拓本、印章を用いてた頃から大量生産・大量消費の資本主義の頃まで、印刷に関する展示物がズラーっと並んでいました。
日本の印刷史は、「百万塔陀羅尼」が印刷された奈良時代から始まりました。
そして仏教文化が合わさり印刷が進んでいったようです。
複製ですが、世界最古の手引き印刷機が展示されていました。
現代の機械的な感じと違い、木製であたたかみがあります。
インクをのせて紙に写す場所をクローズアップ。
グーテンベルク聖書の凸版です。
実際にこの印刷機を使って、インストラクターが目の前で印刷している様子を見学しました。
こちらが、できたてほやほやの生グーテンベルクです。
インクの乗った感じがコピー機とは違い、判子のようなというか、判子の味があります。
すべて手作業で1枚刷るだけでも労力がかかり、本一冊作るのに人件費がどれだけかかるのか…
世のため人のためになる内容を、たくさんの人に届ける方法を考えた結果が印刷だということが伝わりました。
印刷博物館
・開館時間 10:00〜18:00(最終入場17:30)
・休館日 月曜日(休日の場合は翌日)、年末年始、展示替え期間
・アクセス 東京都文京区水道1丁目3番3号 トッパン小石川本社ビル
・入場料金 一般 400円 学生200円 高校生100円
(中学生以下&70歳以上の方無料)
「世界のブックデザイン 2021-22」
2022年12月10日(土)〜2023年4月9日(日)
https://www.printing-museum.org
おしゃれな装丁イラスト・デザインのお見積りは無料
どの本もそれぞれ創意工夫されたり洗練されたデザインなどこだわりが感じられ、書店でもZINEショップでもない、本を媒体にしたアート作品を観ているといっても過言ではないほど充実の展覧会でした。
国によっても加工や色味に特徴があって面白かったです。
現代はかさばらずにどこでも読むことができる電子書籍が定着していて確かに便利ですが、紙の質感に触れたり、オブジェクトとしての本も大事で、なくてはならないと感じました。
いろんなブックデザインに触れて、私もかなり感化されました!
kisa illustration & designでは、おしゃれでインパクトのある装丁イラストからデザインまで受注しております。
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