こんにちは。イラストレーター・デザイナーのkisa(@kisa.ne.jp)です。
伝統工芸業界では、伝統的な職人技を現代のライフスタイルに合わせて進化させたり、自然への配慮、社会貢献など新たな価値づくりにむけて挑戦されています。
今回は、銀座のポーラミュージアムアネックスで開催された「未来につながるものづくり」を観に行ってきたのでまとめました。
Contents
華やかな色漆のチューリップ型グラス
会場に入って真っ先に目を引いた、チューリップのような形をしたインパクトのあるグラスです。
透明なグラスに漆のぼかし塗りが施され、飲み物を入れると色味もやわらかく変化するそうです。
塗るときの調整や乾かすときの温度湿度の関係で色も変わり、時間が経つと色褪せるのではなく、寧ろ漆が透けて色鮮やかになっていくという魅力的な特徴があります。
とろけるやわらかさを表した宙吹きガラス
「宙吹きガラス」の技術を使い、色ガラスを溶解させる設備を持つ工房の強みを生かして複数の調合で独自の色合いを大切にされています。
確かにあまり見ないような奥深い色合いがキレイです。
珍しい黒いグラス、そして台もろとも溶けているような表現が面白いです。
波佐見焼の器×博多曲物のスリーブ
波佐見焼の器に博多曲物のスリーブを組み合わせたタンブラーで、その名も「Haori Cup」
羽織っている感じが可愛いくてオシャレです。
職人の手で曲木を行なっているそうですが、生産性と品質を高める方法を模索中とのことです。
パキッと割れずにここまでキレイに曲がってすごいです。
清水焼と小石原焼の技術を融合した陶芸
京都の清水焼と福岡の小石原焼の技術を融合させた青磁飛飽は、それぞれの技術を持ち合わせた夫婦の作品です。
いやはや…なんとも素敵ですね。
この「蘇嶐窯」の青磁は、生地に顔料を練り込み釉薬を掛けることで深みのある青を表現されています。
そこに小石原焼の技法の「飛びかんな」を入れると、削られた土の溝に釉薬が溜まり規則的な文様が浮かび上がります。
現代的なデザインの金属工芸
ハートやキラキラをあしらった女子ウケ抜群なデザインです。
当て金などを使用して木槌や金槌を使って、工業機械や外注などせず彫刻も含め、一から成形されています。
右上の作品は手毬をモチーフに透かしが施され、「菊根付」とよばれる凹凸がヤスリでつけられています。
金属素材をメインに、水晶やオニキスなど石材がワンポイントになっています。
みかん灰釉を使って焼き上げた陶芸
みかんの枝葉を灰にして作る「みかん灰釉」を使って焼き上げる、透明感のある水色を生かした器や、貫入青瓷など多彩な青瓷釉の器を作られています。
残り汁のようなブルーの部分がたまらなくキレカワです。
みかん灰釉には剪定で落ちた枯葉が使われているのでリサイクルとして地球環境にも貢献されています。
漆を使ったスケボー&手作りキット
ストリート系と伝統工芸は真反対なイメージですが、漆のスケボーというギャップのある作品で、上品なかっこよさがあります。
漆の使用量が激減されているとのことですが、思い切ったアイテムに使用して新たな可能性を見出す姿勢は見習いたいです。
陶磁器のヒビ割れた部分を漆で接着して、金属の粉で飾る修復する「金継ぎ」がご自宅で!?
本来なら割れた皿は破棄するところを、こんな風に魅力的な変身を遂げています。
末長く物を大切にする心って大切ですね。
古着をつぎはぎしてリメイクするように、異なるお皿をつぎはぎしてみたいです。
西陣織・お箸
西陣織のゴージャスな輝きは「引箔」とよばれるもので、和紙の表面に接着剤として漆を塗り、金・銀箔を貼って製作されています。
上図の右から二番目に作りかけのものがありますが、経糸(縦)と緯糸(横)を通して織り上げていきます。
一本ずつ順番通りに織り込むことで元の和紙に描いた模様が再現され、かなり繊細で緻密に計算された織物です。
西陣織の引箔の技術を用いたお箸です。
箔は光源や見る角度によってまったく違う表情になるそうです。
お箸自体の素材は、奈良県吉野の桜の木の間伐採が使用されています。
切れ味の鋭い種子鋏
種子鋏は「つけ鋼製法」とよばれる伝統的な技術で作り上げています。
焼き入れは切れ味を大きく左右するため、温度管理が徹底されています。
手作りの鋏は量産型の鋏よりもかなり切れ味が持続するそうで、1点1点表情が異なるのも魅力です。
沖縄の海とサンゴが詰まった器
沖縄の海とサンゴを表現されたこちらの器は、ラメのようなキラキラとした装飾が施されていて、海面のきらめきを感じさせてくれます。
沖縄の思い出を持ち帰ってもらいたいという思いと、失われつつある生きたサンゴの周りに魚がいる風景伝えたいという思いが込められています。
福祉施設から生まれた伝統工芸品の燭台
多様な障がいのある人が集まり、福祉施設で手作りされた枯損木や風倒木を使った燭台です。
担い手の少ない工芸を障害のある人が担うことは、手法が継がれるだけではなく、障害のある人だからこそできるプロセスへと変化し、且つ所得の向上にもつながっています。
どれも形がキレイでバランスが取れていて、あたたかみがあります。
再利用された半磁土を使った器
半磁土とよばれる陶土と磁土の中間にある粘土が使われているので、陶器のやわらかい印象と磁器の繊細さを両方含み、丈夫で欠けにくい器になっています。
内側が黒色のお皿は高級に見せてくれ、どんな食材にも合わせられて使いやすくていいですね。
自然の力でできたビン・ブロウのガラス
ガラス細工は吹きガラスで作るイメージですが、こちらは息を吹かずに水蒸気と重力など自然の力だけで成形する「ビン・ブロウ」という技法で作られています。
ビン・ブロウで作れる形は限られているそうですが、自然な美しさが表現されています。
うっすら水を引いた展示の仕方で、器のクリアさと水面に映った影を眺めているとエモい気分になります。
珠洲焼らしくない珠洲焼
一般的に珠洲焼は分厚いものですが、口を薄くし象嵌や化粧を施され、ひと味違う珠洲焼になっています。
能登半島で制作され、中世日本を代表する焼き物の一つである珠洲焼は、華やかではないけど料理やお花を引き立てるのにぴったりです。
紙と組み合わせた漆工芸
漆工芸は「変わり塗り」という遊び心のある漆の使い方があり、やわらかい表現も可能だそうです。
素地に使われているのは紙のため、こんなにずっしり重厚感ある見た目なのに、手に持つとすっごく軽いらしいです。
持ってみたかったけどお姉さんに怒られるので我慢。
経年変化を楽しむ陶胎漆器
備前焼のとっくりに感銘を受けて焼き物の世界に飛び込まれたそうで、岡山が代表的な産地なのでちょっと親近感が湧きました。
陶器に漆を塗った陶胎漆器で、経年変化する様子を表現するために銀箔が用いられています。
私も自分で作った鉄アレイ兼備前焼のコップを使っていますが、色合いが変わってきて経年変化の様子を楽しんでいます。
さいごに
職人の想いを知ることができ、展示の仕方もそれぞれの工芸品に合わせて工夫されていて、楽しく鑑賞できました。
私も年々熟成されたのでしょうか…昔ならチラ見で通りすぎていましたが、会場にいた誰よりも立ち止まって美を嗜んでいたと自負しております。
ただの道具としての存在ではなく、愛用品として愛でる存在というのは心を豊かにしてくれますね。
ピグモンの食器も割れなくて良いですが、やっぱり伝統工芸の食器に盛りつけた方が同じ料理でも重厚感が増して、上質なお食事タイムを過ごせそうです。